タンパク尿|原因、検査、食事、治療を解説します
こんにちは。仙台エールクリニック内科・腎臓内科、院長の宮内健一郎です。
健康診断でタンパク尿陽性と判定されたことはありませんか?
かかりつけの先生からタンパク尿が出ていると言われたものの、どうしたら良いか分からなかったことはありませんか?
症状がほぼないため見逃されがちですが、実はタンパク尿は腎臓からの「SOSサイン」です。
そのままにしておくと透析が必要になったり、心筋梗塞や脳卒中が起こったりする恐れがあります。
タンパク尿の原因は何なのか、どんな検査が必要で、どう治療すれば良いのか、分かりやすく解説していきます。
タンパク尿とは?|腎臓からの「SOSサイン」
タンパク尿は尿の中にタンパク質が混じっている状態で、腎臓に負担がかかっている証拠です。
タンパク質は三大栄養素に挙げられる大切な物質で、健康な腎臓から尿の中に捨てられることはありません。
しかし、腎臓に不具合が生じると、タンパク質が尿の中に漏れ出てタンパク尿になります。
タンパク尿を放っておくと、腎臓病の悪化で透析が必要になったり、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)が起きやすくなったりします。
タンパク尿の症状|ほとんど症状がないからこそ危険
タンパク尿は自覚症状がほとんどありません。
症状として尿の泡立ちが有名ですが、実はあまり参考になりません。
ネフローゼ症候群というタンパク尿が大量に出る病気では確かによく泡立ちますが、健康な尿でも泡は立ちます。
色やにおいでもタンパク尿が出ているかは分かりません。
このように症状がほとんどないからこそ、尿検査でタンパク尿を指摘されたらすぐに検査を受けることが重要です。
タンパク尿の原因|腎臓病以外の意外な原因が隠れていることも
- ① 腎臓の病気
- ネフローゼ症候群、腎炎、多発性のう胞腎、片腎など
- ② 腎臓以外の病気
- 糖尿病、高血圧、血液疾患、膠原病、妊娠高血圧症候群など
- ③ 生活習慣
- 塩分の摂りすぎ、タンパク質の摂りすぎ、肥満など
- ④ 生理的
- 起立性、発熱、激しい運動など
上に挙げたように、タンパク尿の原因は実に多彩です。
①腎臓の病気、②腎臓以外の病気、③生活習慣が原因だった場合は早めの治療が必要です。
④の生理的タンパク尿は一時的なものなので問題ありません。
タンパク尿の検査|まずは健康診断のような体に負担のかからない検査から
- 尿検査
- タンパク尿の量、血尿の有無、尿中円柱など
- 血液検査
- 腎機能(血清クレアチニン)、血中タンパク濃度、血糖値など
- 画像検査(エコー、CT)
- 腎臓、膀胱、前立腺など
まずは体に負担がかからない検査を、健康診断より項目も増やして行います。
尿定性(試験紙法)の結果がプラスマイナスでも、量を測るとタンパク尿がしっかり出ていることもあるので、詳しい検査が必要です。
腎臓病が疑われる場合は、腎生検(背中から針を刺して腎臓の組織を採る検査)が行われることもあります。
タンパク尿の治療|減塩が特に重要です
- ① 腎臓の病気
- 薬物療法(ステロイド、腎保護薬など)、食事療法(減塩、タンパク制限)など
- ② 腎臓以外の病気
- 原因となった病気の治療、食事療法(減塩、タンパク制限)、薬物療法(腎保護薬)、など
- ③ 生活習慣
- 食事療法(減塩)、ダイエットなど
- ④ 生理的
- 特に必要なし
タンパク尿の治療は原因によって少し違いますが、減塩(1日6g未満)がほぼ共通しています。
摂りすぎた塩分を体の外に捨てるのは腎臓の仕事ですから、減塩で腎臓にかかる負担を減らしてあげると、タンパク尿の減少が期待できます。
タンパク制限は筋肉量が落ちるリスクもあるため、高齢の患者さんではあえて行われないこともあります。
薬物療法は新しい腎保護薬(SGLT2阻害薬、MR拮抗薬)が最近保険適用になり、治療成績向上が期待されています。
まとめ|タンパク尿を指摘されたら必ず受診を
タンパク尿は腎臓からの「SOSサイン」であり、早めに対処することが重要ということがお分かりいただけたでしょうか?
タンパク尿を放っておいて透析になってしまった患者さんや、心筋梗塞や脳卒中になってしまった患者さんを、私はこれまでたくさん診てきました。
そしてその度に、早期発見・早期治療の重要性を痛感してきました。
症状のないタンパク尿のために時間を割くのは気が進まないかもしれませんが、将来の健康を守るためにもぜひ専門医療機関の受診をご検討ください。
当院は患者さんと同じ目線に立ち、ライフスタイルに合った検査・治療を心がけています。タンパク尿でお悩みの方はお気軽にご相談ください。